Sour & Sweet(バレンタイン&ホワイトデー企画)

翠子サイド

名前を呼ばれて顔を上げると、優さんがこちらに駆け寄る姿が見えた。



あれから毎日、礼拝堂でお祈りして良かった。



スカートを翻して走るなんて、はしたないことだけど…。



今はそれに構うことなく、校門の外にいる優さんに向かって走った。



「優さん…。」



「翠子、ゴメンっ!」



そう言うと、優さんは頭を下げる。



「頭を上げてください、もう良いのですから。」



「良いって…?」



「こうして来てくださったのだから、それだけで嬉しいの…。」



「翠子は、許してくれるの?」



私は、頷いた。



「翠子、これ…。」



優さんが、紙袋とチューリップの花をくださった。



「俺、翠子が好きだ。

だけど、俺は翠子より背低いし、金持ってないからファストフードの安いセットしか奢ってあげられないし、クラシックどころかポップスしか聴かないし…。

こんなサエない奴だけど、もし翠子が愛想尽かしてなかったら、付き合って欲しい。」



私の返事は、決まっている。



「はい。」



私の目に溜まった涙を、優さんが指で拭ってくださった。



こんな優しい人に愛想を尽かすなんて、あるわけがない…。



「私の背は、これ以上縮まないけれど…、それでも良いですか?」



「これから毎日、牛乳飲むし!

…嫌いだけど。」



ぼそっと呟いた優さんの言葉に、私は噴きだした。



「笑うなよ…。」



不機嫌そうに言った優さんの表情は、口調と裏腹に笑っていた。




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