なんでやねん!
そう言えば、勇輝はイクラに『キレイだ』と言ってくれただろうか。
せっかく光を連れ出して、言いやすい環境を整えたのだから、言ってるだろう。
あいつの事だ。
「いつもよりキレイやな。」
なんて、意地悪く笑いながら言うんだろう。
どんな言われ方でも、女の子は好きな人に《キレイ》と言われたら、それだけで嬉しいものだ。
それにもっとキレイになる。
キレイになって、勇輝のハートを鷲掴むのじゃよ、イクラ。
そうだ、勇輝の事を聞こう。
「神崎さんは、勇輝と付き合い長いんですよね?勇輝の好きな女の子のタイプって、ご存じですか?」
「え?あいつの?」
「ええ。私が直接聞いても、はぐらかされちゃうんで。会社の女の子に、勇輝人気あるんで、聞かれるんですよ。」
私が勇輝に気があると思われたら、困る。
「…。具体的に言うか、彼のタイプは…。」
神崎さんの話は、具体的と言うより、個人名だった。
こんな質問、するんじゃなかったと後悔した。
私はこの会話を、胸の奥に沈めた。
そして、忘れた。