すき、好き、もっとスキ。
「修旅ん時」
「……えっ?」
「バスに酔って、そん時のガイドさんに優しく介抱して貰ったから」
そっと小さく聞こえた声に、視線を落とすと。
そこには、バスに乗ってからずっと寝ていた男の子が少しズレた黒フレームの眼鏡を直しながら、あたしを見上げていた。
「そんなところじゃないですか?」
コソッと言われ、あたしは慌てて視線をあげる。
「しゅ、修学旅行の時にバスで体調を崩してしまって。そ、その時のガイドさんが優しく介抱してくれたんですよ」
「大石さんは、そんなガイドさんを目指していらっしゃるんですね」
「あ、はい」
そのまま、皆の話は就職へと移っていった。
この辺りは名門高校の生徒さん。
自分のなりたい職業に出来るだけ早く就く方法とか。
そんな話をしていた。
ホッと一息ついて、あたしの斜め後ろの席に座る男の子を見ると、もう眠っている。
貰った資料の席順には、真山 匡(マヤマ キョウ)と書かれていた。