すき、好き、もっとスキ。
なのに。
「あ、先生。松永さんを呼び出したのは、あたしなんです」
気付いた時には、そう声をかけていた。
「はぁ?」
明らかに怪訝そうな顔を見せる先生に近寄り、
バカはバカなりの嘘をどんどんと続けた。
道に迷って。
2階と3階を間違えた。
なんて嘘は通用しないくらいの事はわかってる。
女の子は時間外に部屋から出ちゃ駄目なんだもん。
だから、あたしに吐ける嘘なんて限られてる。
「お昼に助けてもらったんですよ、松永さんに。で、お礼にジュースでも奢ってあげようと思って部屋から連れ出したんです」
「それでも、時間外の部屋から出ることは、あれほど禁止って…」
「って、松永さんは言ってたんですけど、あたしが無理矢理。ね、松永さん?」
松永さんを見ると、目に涙を溜めてて。
コクン、とあたしが頷くと。
松永さんも小さく頷いて。
その場は収まったんだ。