すき、好き、もっとスキ。
「泊まりっすか!?」
辺りに響き渡る大声で叫んだあたしに、加山さんはギロッと睨んで
「そうですよ。宿泊学習をされる高校生の皆さんのガイドですって、今言ったでしょう?」
と冷静に続けた。
「近場ですし、そこまでの観光案内は必要ないそうなんで、あなたでも大丈夫だとは思うんですけど……」
え、え、えー!
就職して2年。
生まれて初めての泊まりでのガイド!
じゃあ、出来ちゃうの?
「右に見えますのは~~~」ってやつ。
出来ちゃうのー!?
「ただ!」
「は、はいっ!」
未だ恐い顔であたしを睨む加山さんに、ニヤケた顔を元に戻す。
「下車説明、車内清掃、お客様の健康管理、バスの誘導等、必要最低限の事は怠らないように!」
「はいっ! 精一杯頑張ります!!」
そう元気よく返事をした、あたしに加山さんは今までに一番大きな溜息を漏らした。