気づけば、あなたが
一方、杏は受験票の事など全く頭になかった。



いつもより急ぎ足で駅に向かう。



何だか今日はやっぱりいつもと違う。


とてつもない緊張感が押し寄せてくる。



もうダメよ・・・落ち着いて!



駅が見えると切符売り場に駆け寄り、ボタンを押した。



「杏、オハー!」


「えっ、陽介」


「ほら、電車くるから早く行こうぜ」


陽介は杏の手を引っ張って改札を抜けた


「陽介って、どこの高校受けるのよ」


「お前と同じ、紅南高だけど知らなかったのか」



「初耳・・・」



「ほら、来たぞ」


ホームに入ってきた電車のドアが開き、二人も奥へ進んだ。



空いている席に着くと、杏は急にカバンの中を探り始めた。



・・・ウソッ!


えーっ・・・ないよ・・・

どこをどう探しても見つからない。


杏は頭の中が真っ白になった。



そして涙が・・・。
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