気づけば、あなたが
「ただいまー!」


杏が玄関のドアを開けた瞬間、

「パン、パーン!!」


クラッカーが鳴った。


二人とも予想外の演出に度肝を抜かれた。


「もう、ビックリさせないでよ」


杏は笑った。


「だって絶対におめでとうだと思って、これしか思い浮かばなかったの!」


「さすが、杏のお母さんだね」


「じゃあ改めて、二人とも合格したよ」



杏の嬉しそうな表情に母親も顔がほころんだ。



「さあ、二人とも中に入って」



母親は二人にそう言った。



リビングに入った杏は声をあげた。


「えっ、ちょっとスゴいよ!」


「ちょっとどころじゃないよ。おばさん、気合い入ってる」



テーブルにはお祝いの為の料理が並んでいた。



「ふふん、どう?」


満足気な顔だった。


「もう最高だよね!」


杏は母親に対して、感謝の気持ちでいっぱいだった。



「そう言えば、陽ちゃん達は?」



「うん・・・途中で別れちゃったから知らない」


杏はあっさりと答えた。



美波はとりあえず、黙っていた。


「さあ、座って」


グラスを出しながらさっきとは違う表情に母親は気づいた。
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