気づけば、あなたが

すれ違い

結局、陽介は来なかった。



美波と本田も帰り、急に静かになった部屋。



「陽ちゃん、来なかったね」


「べっ、別に約束してたわけじゃないもん」


「あら、そうなの」


何杯目かのコーヒーを口にしながら、母親も幾分がっかりした様子だった。



杏は二階に上がるとしばらく出て来なかった。



母親はゆっくりと片付けを始めた。



そっとしておいた方がいいのだろう


そんなふうに思った。
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