気づけば、あなたが
翌日、何となく晴れ晴れしない気持ちのまま登校した。



「杏、オハヨー!」


後ろから声を掛けて来たのは美波だ。


「昨日はご馳走さま、杏のママの料理美味しかったよ」


「ホント! それ聞いたら喜ぶよ」



いつものたわいない会話



そう、今日もきっと以前と同じ、みんなでワイワイ出来るんだよね・・・




目の前を陽介が通り過ぎた。


「よう・・・」



素通りしていく陽介。


言葉が出なかった。



そのまま立ち止まってしまう杏。



「どうしちゃったの、アイツ!」


美波の苛立ち。



昨日の合格発表を見るまでは、いつも通りの陽介だった。


それから・・・



「教室に行こう」


美波はそう言った。



美波にとっても、陽介の態度にはショックだった



挨拶くらいしたっていいのに・・・


朝から嫌な気分になってしまった。





教室に入ると陽介は本田と話をしていた。



二人は顔を見合わせた。



「私らに気がつかなかったのかな?」


美波はそう言ったが杏は違うと思った。



さっき一瞬だけ、目が合っているから。
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