気づけば、あなたが
「杏、大丈夫?」


美波の心配そうな顔。


でも返ってきた反応は意外だった。



「えっ、何の事?」



美波は駆け寄り、彼女の無表情さに驚いた。


「美波、どうかしたの?」


その内、本田も教室に戻って来た。



美波は本田を見るなり溜め息をついた。



「海藤!」


「何、本田」


「いや、先に教室に戻ったから、どうしたかと思って」


「さっきから美波も本田も変な事言うね」


「だって、さっき陽介の事で・・・」


美波がそう言うと杏は、それをさえぎるかのように言った。


「風見君がどうしたって?」



えっ!!


美波と本田は顔を見合わせた。



「杏、ちょっとどうしちゃったのよ!」


杏の表情は変わらない。


陽介と呼んでいたのに。



次第にクラスメートが教室に戻って来た。


陽介も入って来た。


何となく場の雰囲気がよくない。


杏は陽介の横を、誰もいないかのようにスルーした。



クラスの中でも、さっきの陽介達の出来事にコソコソ話をする者が出てきた。



そして、陽介と佳奈の噂が広まるのに、そう時間はかからなかった。

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