気づけば、あなたが
校門の前は、生徒や父兄たちで溢れていた。


それぞれの中学三年間、今日の卒業式を持って ひとまずピリオドが打たれる


杏は校門をくぐり抜けると、いつもと同じように友人達と挨拶を交わす。


美波は、その様子をひとつひとつ把握するかのように見つめている。


彼女自身、答辞の内容を変更すべきか迷っていた。



一時の感情に押し流されて勝手なことをしていいものか・・・。

自ずと答えは出ていた。


昇降口で本田が腕を組んで、二人が来るのを待っていたからだ。


「おはよう、お二人さん!」


「おはよう、本田!」


杏と美波は一緒に言った。



「とうとう来ちゃったな」

本田は美波の方を見つめた。


杏はフッと笑った。


「何なの。私に気使わなくてもいいよ」


「やだぁ、勘違いしないでよね」


美波は否定しながらも、半分は認めているかのように、はにかんで答えていた。


杏はそんな美波を、隠し事が出来ないたちだと思った。
< 68 / 145 >

この作品をシェア

pagetop