気づけば、あなたが
「海藤 杏」


「はい!」



杏は階段を上り、壇上に立つ。


陽介は、その姿を見逃すことはなかった。


自分に出来る中学校生活最後の、杏に対する思いやりだった。



卒業証書を手に、階段を降りる。



杏は一度として、陽介の方を見る事はなかった。



それを目で追う陽介。


どうすることも出来ないもどかしさ。



ただ 時間だけが過ぎていく。


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