気づけば、あなたが
しばらく杏は、斜め前の席に座っている二人連れを見つめていた。



恋人同士なのかな・・・?


そんな事を思いながら黙って見つめている。



美波は、携帯を取り出しメールを打ち始めた。




「本田にメールしてんの?」


「確か陽介と一緒にいるはずだから」



「美波!」



「何よ」



「あいつは私の事、避けてるんだよ、今さら顔合わせてどうするの?」


「杏、じゃあこれから高校三年間ずっと、陽介と関わらないでいられるの!!」



「そんなこと・・・言ったって」



杏自身、そんな事はわかりきっていた。




このまま
避けて通れるのならそれでもいいと思った。




「私が杏なら、陽介を振り向かせるわ!」



「じゃあ美波が、佳奈から奪えば良かったじゃない」



杏は半分、投げやりに答えた。



美波はそれを聞いて溜め息をついた。



「そんなふうに思っていたら、後悔するの目に見えてるよ」


「美波さぁ、本田と付き合うようになって何だか口調が似てきてる」


「そう・・・別にいいじゃない」



そう言って少しはにかんだ。
< 83 / 145 >

この作品をシェア

pagetop