7つの日々。
徹底的に静まりかえってしまった朝食の場を、逃げるように去った。

階段を昇っている間、へらりと笑う練習をした。

ヘタレという言葉がある。

きっと、今の僕のことを、一番適確に説明できる言葉だ。

多少引きつったままの笑顔は、自分でも苦笑いしそうなくらいのできだった。

オトの部屋は、開け放たれていた。

出入り口近くのノートにでかでかと「閉めろ!」と書かれている。

オトが弱くみえた。

語弊かな。

オトが昔より、ほんの少しだけ女の子にみえた。

背中はとても小さくて、声をかけるのを戸惑わせるだけの、オーラがあった。

「オト。」

壁を向いてベッドの上で丸くなるネコみたいな彼女。

後ろ手にスケッチブックを見せた。

映画のエンドロールみたく綺麗な、長い文章がそこにあった。

「聞こえたよ、ちーの声」

少し赤くなる。
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