7つの日々。
全然自然な流れじゃないけれど、唐突な問いに答える。

「僕もフェイク。本当は小さな会社に就職するんだ。親父のことがあるし」

細い背中を傷つけないように、僕は考える。

へらりと笑ってみたり。

それしか思い浮かばないけど。

「進学と就職で選べたんだ。でも、自分で決めたから」

何も傷つけないように、何も壊さないように、ひどく脆いオトの世界に入っていく。

それはたぶん、紙一重の綱渡り。

心地よい沈黙じゃなくて、緊張感なんて当たり前のただの寂しい沈黙。

オトは肩で息をして、時折ため息をつく。

フェイク、贋物だよ、僕は。

取り繕って、綻びは切り捨てて、綺麗な部分だけ残していくんだ。

そういえば、どこかで聞いたことがある。

「フランスって、ワインが有名だよね」
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