なくした記憶

記憶のすれ違い

×とまり×




七年前の蝉の声が鳴きやまない時期
私達が九歳の頃


ミーンミンミン

ピンポーン

「しゅうくんだよ、きっと」
七瀬はいつも秀が来るのを楽しみにしていた
もちろん私も…

「こんにちは」

ドタドタドタ

「いらっしゃい、しゅうくん」
「いらっしゃい、しゅうくん」

両親は共働きでいない

「おじゃまします、七瀬ちゃん、とまりちゃん」

この時はまだ同じ顔をしていた
たぶん秀はどっちがどっちだか分かっていなかったと思う

「私、ジュースとお菓子持ってくんね、先、お部屋行ってて」

「「うん」」

俺は何も考えず冷蔵庫からジュースを出し棚からお菓子を取り出しお盆に載せ
部屋に向かった
部屋の前、両手がお盆で塞がっているのでお盆を下に置いたときだった

「俺、七瀬ちゃんのこと、すきだ!!」

「私もしゅうくんのこと好きだよ」

まさかと思った
聞き間違いだと思った
でもドアの隙間から見えてしまった
七瀬と秀がキスをしている所を


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