加納欄の記憶喪失 シリーズ5
「熱計っただけだから」


熱(-.-;)?


「こうやって」

 と、言って、祥子先輩は、あたしのオデコに自分のオデコをくっつけてきた。

 そして、小声で。

「キスなんてしてないわよ!」

 と、言った。

「ごめんなさい(__)」

 誤っておいた。

「全く。何か飲む?買ってくるわ。大山さんはコーヒーでいいでしょ?欄ちゃんは?」

「ありがとうございます。同じ物でいいです」

 祥子先輩は出て行った。


き、気まずい……。


「肩、大丈夫なのか?」

大山先輩から話しかけてくれた。

「はい。痛みも無くなってきてます。あっという間に治りますよ。大山先輩は大丈夫ですか?頭は」

「あぁ、この分ならそろそろ退院できるだろ?」

「ホントですか?よかったぁ(^O^)バレンタインまでには戻って来れるといいですね」

「バレンタイン?」

「そ、そうですよ。毎年バレンタインには、私、チョコあげてるんですから、去年はチョコプリンにしたら、喜んでましたよ。覚えてない、です、よね?」

「チョコプリン?」

「はい。チョコレート味のプリン。今年はどうしますか?チョコレートにしますか?チョコプリンがいいですか?違うのリクエストありますか?」

「・・・」

「大山先輩?」

大山先輩が、急に黙ってしまったので不安になった。

「具合、悪いですか?あ、さっき、祥子先輩が言ってたのに、私、勝手に話しちゃってすみません。横になって下さい。バレンタインデーは、まだ先ですし、リクエストあったら後で教えてもらえれば・・・」

自分の口調が、少し早口になっているのがわかった。

「・・・」

「大山先輩?」

「悪い」

「・・・何がです?」

「チョコは、いいや」

「あ、そうですか。じゃ、ケーキとか」

「いや、そうじゃなくて・・・」

「え?」

「祥子が好きなんだ」

「え?」

「だから、義理チョコとかはいらないんだ。欄ちゃんも毎年金かかって大変だろ?そういうの」


え?


スキって・・・。


「大山先輩・・・?」


「俺は祥子が好きだ」





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