加納欄の記憶喪失 シリーズ5
「祥子が好きだ」

そう、はっきり、聞こえた。

聞き間違えじゃなかった。

しかも、2回目の告白は、ハッキリあたしの方を向いていた。

目線もしっかりあたしの方を・・・あたしの、後ろ?

ゆっくり、振り向いた先には、祥子先輩が、缶コーヒーを3本持って、顔を赤くして立っていた。

大山先輩は、まだ祥子先輩を見つめていた。

あたしは、その場から逃げた。




退院してから1週間後。

「欄ちゃん、病院どおだった?」

 苫利先輩が聞いて来た。

「完全回復ですよ。これで内勤終わりです」

「おぉ!張り切ってるじゃん」

「当たり前ですよ。未だに犯人は逮捕してもらえないし、内勤の仕事は雑用ばかりだし、うんざりです。ハイ、熱っついですよ」

 文句を言いながら、あたしは苫利先輩に紙コップに入れたコーヒーを差し出した。

「サンキュ、腕が治ったら気がきくねぇ」

「肩です。あ、おはようございます」

 課長が入って来た。

「おはよう」

「課長、課長。肩完治しました。ご迷惑お掛けいたしました!本日より外回りいいですよね?」

 課長は、あたしをチラッと見て、皆の顔をサラッと見た。

「高遠と組め」

「イヤです」

 ソッコー答えていた。

「なに?」

「あ?いや、あの。高遠先輩は知っての通り、途中から単独行動起こすタイプですから、外回り記念日1日目を高遠先輩に振り回されたくないです。吉井さんと行ってもいいですか?」

 課長があたしに言われて、吉井さんを見た。

「じゃなかったら、苫利先輩?」

「吉井と行け」

 課長が認めた。


(^O^)v


 あたしは、鼻唄を歌いながら、自分の席に着いた。

「欄君ご機嫌だねぇ」

 鮎川さんにも言われた。

「当たり前ですよぉ。やっと、シャバの空気が吸えるんですよぉ」

「大山とは昨日会ったのか?」

 1秒後。

「いえ、ここ暫く忙しかったので、でも退院したい。って言ってましたよ。そろそろ入院生活も退屈してきた見たいです」

「あいつもあきっぽい奴だからな。誰かと似てるな」

 と言って、鮎川さんはあたしを見た。

< 14 / 50 >

この作品をシェア

pagetop