加納欄の記憶喪失 シリーズ5
 そう言って渡されたのは、1枚の用紙に20件はかかれている容疑者のリストだった、しかもそれが5枚。

「ホントに何にも引っ掛かってないんですかぁ?」

 少し誘導作戦を入れる。

「まぁ、今のところ」

 歯切れの悪い返答だった。

「・・・高遠先輩は、当たりをつけてるみたいでしたけど?」

「え?ホント?」

「あいつらが動かないとって」

 あたしは、シラーっと吉井さんを見る。

 あいまいな返事。

口止めされてるような・・・。

「吉井さん、何か知ってます?」

「い、いいや」


返事が早すぎるし、声が上ずっている。


「知ってるんですね?高遠先輩が、当たりをつけてるのは誰なんです?」

「知らないよ。ホントだよ」

「知らないわけないじゃないですか。こんなに毎日歩き周ってて!」

「話したら、欄ちゃん、行っちゃうだろ?」

「どこにですかっ!」

「黒龍、あ!知らない!私は何も知らない」

「黒龍?まさか、黒龍会ですか?高遠先輩が当たりをつけてるのって!」

「黒龍会なんて言ってないじゃないか。欄ちゃん考えすぎだよ」


あくまでもトボケルつもりね?


ふぅ~ん(-.-)


「あ!吉井さん!そこ、行き過ぎ!リストの住所!」

「え?うわっ、待って」

 そう言って、吉井さんは車を止めた。

「すぐそこだから、1人で聞いてきちゃいますよ。吉井さん、待ってて下さい」

「一緒に行くよ」

「大丈夫ですよ。それとも何か信用されてないんですか?」

「いやっ、信用してないなんて・・・そんなこと思ってないよ。いくら完治したからって、ちょっと心配しただけじゃないか」

「なんだ、大丈夫ですよ。帰りに飲み物買って来ます。吉井さん何がいいですか?」

「悪いね。コーヒーでいいよ」

今の言葉で帰ってくると安心したようだ。


フッ(-.-)


甘いな(__)


なんで、吉井さんを選んだのか、本人はまだ気付いていないようだった。

「じゃ、行ってきますね」

 と、言って車から降りて、車が入れない小道にわざと入った。
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