加納欄の記憶喪失 シリーズ5
 黒龍会に、乗り込みたかったけど、そっちは絶対高遠先輩が張り付いてるだろうから、行くわけにはいかなかった。

 この事件は、絶対に、あたしの手で犯人を捕まえるつもりでいた。


 高遠先輩には、話した所であんまり仕事につかせてくれそうもないし。


囮になるのがダメなら、1人で、犯人見つけてやる!


 単独行動を起こすには、簡単に人を信用する人とペアを組むと、先ほどの手口で簡単に、1人になれる。

 リストは持ってきてないし、ここら辺で、リストにあがってる住所があるかなんて、知りもしない。

 ただ、適当に止めただけだ。こういう小道が目についたから。

吉井さんが、いつ気付くかわからないけど、まぁ、少しは時間かせぎができるだろう。

住所は・・・阿多岸7丁目。

あの、倉庫の近くだ。

いい所で降りた。

もう1度行きたかったんだ。

鑑識が入っただろうから、収穫はないだろうけど、何か思い出すかも。

 しばらく歩くと、あの時の倉庫が目に入ってきた。

 相変わらず、倉庫内は薄暗かった。

適当な材木と鉄筋と・・・あの時見に来た時の記憶とさほど変わっていない。

 その時、カタンッと物音がした。

 あたしは、音のした方へ一瞬にして振り向く。

「誰っ?!」

 音のした方へゆっくり歩いて行った。

 鉄筋がごちゃごちゃと積んである方だった。

 耳に神経を集中させた。


いる!


「いるのは分かってるのよ。顔見せたら?」


1人になった途端に動いた?


ずっと監視されてた?


黒龍会?


多人数ではなさそうだけど・・・。


なんで、出てこようとしない?


 足をもう少し進めてみた。

 すると、突然。

「待った!」

 と、鉄筋の陰から声がした。

 そして、両手を上げて、1人の男性が出てきた。

「止まって!」

 あたしは、男に指示をし、顔をじっくり見た。

 見覚えがあった。

「……りょ……お?」

 孔明師範のもとで一緒に修行をしていた時の仲間だった。

 あたしは、この男に好意をもっていた時期もあった。

 あたしと孔明師範との事を偶然知ってしまった遼が、孔明師範に殴りかかっていったのだ。

< 17 / 50 >

この作品をシェア

pagetop