加納欄の記憶喪失 シリーズ5
「そう」

「どんな事件だったんだ?」

「うん・・・」

 今度は、あたしが口ごもってしまった。

「無理には聞かないさ。話せない内容なら聞かないよ」

「うん・・・」

 仕事の内容は、たとえ遼にでも言えない。

「欄。結婚したのか?」

「えっ?」

 突然の質問に顔が熱くなった。

「し、してないよ」

「付き合ってる人は?」

「い、いないよ」

「好きな人は?」

 まるで当たり前のように、大山先輩の顔が浮かんだ。

 しかも、最近あたしにはしてくれない、あたしに向かって笑いかけたのだ。


あたしってば。


「好きな人は・・・。フラレタ・・・」


大山先輩、今、記憶喪失だもん。


それに、今の大山先輩が好きな人は、あたしじゃない。


もしかしたら、記憶がある時から、祥子先輩の事が好きだったのかもしれない・・・。


もしかしたら、記憶が戻っても祥子先輩の事が好きかもしれない。


だって、あたしが、ただ大山先輩を思ってただけで、大山先輩は、あたしにスキのスの字さえ言ったことがない。


合コン行くし。


遊びに行くし。


あたしに対して、関心がない。


何度か、助けてもらっても、あたしに感情を寄せている感じじゃないし。


「ん?欄?どした?考えこんで」


え?


「ごめん、ちょっと・・・」

「フッタ奴のこと考えてたのか?」


アハハ。


 と、から笑いした。

「時間あるなら、飯食いに行かないか?」


お昼にはまだ早いけど。


いっか。


どうせ、単独行動起こしてるんだから。


「あっちに車止めてあるから」

 促されて、ついて行こうとしたら、1台の黒い車が、もうスピードで倉庫に突っ込んできて、急ブレーキをかけた。


いや~な予感(-.-;)


 中から出てきたのは、高遠先輩と、苫利先輩だった。


ハァァァァ。


サイアク(__)


「何してるんだ?」

 高遠先輩が、怒った口調で言った。

「欄ちゃん。探したよ」

 苫利先輩も、少し怒ってる。


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