加納欄の記憶喪失 シリーズ5
それは・・・。


あたしを守ってくれたから・・・。


「大山先輩、私をかばったんです。私が交わせなくてやられちゃって、次の一撃を止めるために一度は倒したんですけど・・・あいつ、立ち上がってて・・・大山先輩を、何回も何回も殴って・・・」

あの時の場面を思い出して、目眩がした。

苦痛に耐えながら、あたしを必死にかばって・・・。


頭から血が流れてた・・・。


無言になってしまった、あたしを気遣い、祥子先輩が。

「なにしんみりしてんのよ。あんたは安静よ。また来るから」

と言って、病室を出て行った。


あたしは、また眠ってしまった。

そして、その日は、そのまま祥子先輩は現れなかったらしい。

次の日の午後を回ってから、祥子先輩があたしの部屋に入って来た。

「欄ちゃん起きてる!?大山さん、目覚ましたわよ」

「え?」

「今さっき、目覚ましたのよ」

「・・・ホントですか?・・・よかったぁ」

「ほらっ。行くわよ」

「え?行くって?!」

「人目見れば安心するでしょ?ちょっとくらいなら脱け出しても大丈夫よ。部屋向かいなんだから」

「そ、そうですけど。私、安静なんじゃ・・・」

「ばっかねぇ。会いたくないの?」

「会いたいですよ!」

ソッコー答えていた。

「行くわよ。歩ける?」

「大丈夫です」

そう返事したものの、殴られていた痛みがあるため、ゆっくりとしか歩くことが出来なかった。

それでも歩くことにさほど支障はなく、肩もある程度固定されているのでゆっくり歩けば特に問題はなかった。

部屋の扉を開け、向かいの大山先輩の部屋の前に立った。

なんだか、少し怖かった。

あんなに殴られた大山先輩の顔をまともに見ることができるだろうか。

「ほら、行くわよ」

祥子先輩にうながされたが、一歩を踏み出すのを、ためらってしまった。

「祥子先輩お先にどうぞ。後から入ります」

祥子先輩に先に入ってもらい、あたしは深呼吸をした。


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