加納欄の記憶喪失 シリーズ5
病室に戻ると、高遠先輩が待っていた。

「調子はどおだ?」

たぶん泣きはらした瞳に気付いているだろうけど、何もそこにはふれなかった。

「はい。痛み止めも効いてるので」

「日常生活に問題ないか?」

「例えばどんな問題です?」

「電話取ったり。右手が不自由なら、左手で過去の事件の整理する作業とか。まぁ、その、なんだ、内勤だな」

「・・・わかりました。内勤ですね?・・・外周りだって行きますよ?」

「必要になったら行かせるさ。今はまぁ、動けるなら出て、頭使った方がいいだろ?」

高遠先輩のさりげない?優しさが伝わった。

「犯人捕まえるなら、どんな仕事でもいいですよ」

あたしを殴った犯人は、未だにわからないでいた。

篠塚も外国人から覚醒剤を買ったというだけで、それ以外の情報が得られないでいた。

「・・・そう言えば」

あたしは、フト思い出したことがあった。

「ん?」

「あの時、私を倒したらプレゼントが貰える。だから、死ね。って、言われたような気がするんですけど・・・」

「プレゼント?」

「はい」

あたしと、高遠先輩は首を傾げた。

「知り合い?」

高遠先輩に聞かれた。

「まさか!それこそホントに何にも情報ないんですか?」

「お手上げだよ。目撃者はいねぇし、売人はヤクザの後ろにひっこんじまって出てこねぇし。今のところ、打つ手がねぇよ。あいつらが動いてくれなきゃな」


アイツラ(-.-)?


アタリつけてる?


「いい方法知ってますよ。動いてもらいたいなら」

高遠先輩を見つめた。

「ダメだ」

高遠先輩は、即答した。

あたしの考えを理解した上での返答だった。

「1番簡単な方法じゃないですか」

「あぁ、お前が完全に回復してるならな。でも、今のお前じゃ、一般市民より始末が悪い。オトリなんて許可しないからな。お前は内勤だ」

「大丈夫ですよ。やってみなくちゃわかんないじゃないですか。先に進むことも出来ないんですよ」

「却下」

「せんぱぁい」

「知らん。退院の手続き取ってあるから、荷物片付けろ」

あたしは、両のほっぺたをプクッとふくらませた。


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