加納欄の記憶喪失 シリーズ5
そんなあたしの顔を見て、高遠先輩は。

「殺られるまで気配感じなかったんだろ?そういう奴等を、今のお前が相手できるのか?次は誰が助けに入るんだ?仁はあの調子だぜ」

あたしは、そう言われて、大山先輩の病室を見た。

昨日の場面が頭をよぎりそうになった。

「わかりました。とりあえず退院して出勤します。どうせ大量のデータ用意して待ってるんでしょ?」

病室には運べない犯罪履歴の顔鑑定を考えて嫌になった。

「そういうことだ」

「うぇ~」

その量を想像して、仕事が半日つぶれそうだった。

「用意しとけよ。仁にも話してくるから」

ドキッとした。

大山先輩の名前を聞くだけで、心臓が痛かった。

高遠先輩は、行くか?とは聞かなかった。

「私も!私も、行ってもいいですか?」

高遠先輩は、1秒の間をおき、どうぞ。と、左手で大山先輩の病室へ誘導した。

先に自分の部屋を出たので、大山先輩の病室をノックする役目が待っていた。

自分から、行くと言い出したため、病室の前で躊躇するわけにもいかなかった。


決めたじゃん!


今まで通り接するって。


1からやってみるって。


しばらく会えないんだから!


弱気になるな!


忘れられてるくらいなにさ!


嫌われたんじゃないんだから。


「おい」

「・・・」

「なに、固まってんだ。早く入れ」

ボーッとしていたわけではなかったのに、動きが止まっていたらしい。

「欄、お前」

高遠先輩があたしを見た。

「な、なんです?」

「まさか、緊張してんのか?」


緊張?


「え、わかんないです」

「心臓ドキドキしてないか?」

「え、ど、どうかな・・・。でも、言われたら、なんとなく・・・してるかも」

「急に熱くなったり、手に汗かいたりしてないか?」

「そう言われたら・・・」


え?


え?


なに?


なんで、わかるの?


病気なの?


「欄、お前」

「なんですか・・・?」

「更年期障害なんじゃないか?」

「こ・・・違いますっ!」


まったくもぉ~。


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