Comfortable
「結花が毒舌になる時って、絶対何かあった時ですよ」


「何にも無いよ」


あたしがそう言えば樹はかなり不満そうな顔をしていた。


陽が沈みかけているからか公園は徐々に赤色に染めていて樹の髪をキラキラと反射させていて綺麗だった。


「無理に笑顔を作る必要ってないと思いますけどね」


樹はそう言うとあたしの手から革鞄を取り持ってくれた。


「どうしたの、樹」


樹のそんな行動に理解できないあたしは、鞄を取り替えそうとした。


「仕方ないから持ってあげますよ、それに家も隣だし」


樹はそう言うと先に歩き出した。


我が幼馴染ながら掴みにくい奴・・・


あたしはそう思いながら慌てて樹を追いかけた。


「まあ、言いたく無いなら言わなくてもいいですけど全部1人で抱え込まないようにして下さいよ?学校違うとは言え話ぐらいは聞きますし」


樹の言葉に感謝した。1人で考え込めば考え込むほどあたしが壊れるのを幼馴染の樹は誰よりも知っている。


「あのさ、恋愛ってどこから始まるんだと思う?」


あたしがそう言った時、ちょうど心地よい風が吹き気持ちが良かった。


「また唐突な質問ですね、恋愛ってどこから始まるんだって聞かれてもわかんないですね。ただ、あえて言わせてもらうのなら好きになるのに理由なんていらないんじゃないんですか?」


樹はそう言うとあたしに笑いかけてくれた。


「そうだね・・・」


あたしがそう言うと樹は少し不思議そうな表情をしていた。


樹なりにあたしが何を悩んでるのか考えてくれてるのだと思う。


何も悩んでないって言えば、嘘になってしまう。ただ、どうしたらいいかわからないだけ。
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