Comfortable
刹那と距離を開けた理由なんて誰にもいえない。


ううん、言える訳が無いんだ。


この選択肢が正しいのかはわからないけれど、間違ってないって思いたい自分が居る。


「特に理由はないなんてお前の表情を見てたらそう思えねぇよ」


会長は書類を拾い続けるあたしを見ながらいってるのがわかる。


痛い2人の視線。


「会長、踏み入れてはいけない問題って世の中にたくさんあるんですよ?」


あたしはそんな真綾と会長の視線に耐えながら言った。


お願いだから誰もこの問題に踏み入れないで。


誰かに聞いてもらえば、きっとあたしは甘えてしまう。


そしたらダメなんだよ、意味がないんだよ。


だからあたしは、自分の性格が捻じ曲がってるように思わせるための発言を言い続ける。


誰もあたしの内側に入ってこないように。


誰一人あたしの心の中に入れない。


「ちょ、結花?本当にどうしたのよ」


「別になんでもないよ、これがあたしの素なの。幻滅した?」


心配してくれる真綾の言葉はありたがったけど今のあたしにはそんな優しささえ痛い。


嘘の言葉を吐き続け、偽りの自分を持つ。


これが今のあたしの精一杯の強がり。


誰も気が付かないで、あたしのこの強がりに。


「第一めんどくさいの。好きだとか付き合うとか。あたしはそういうの嫌いだから。だから刹那に距離を開けようって言っただけ」


あたしの発言に真綾と会長の顔が歪んでいくのがわかった。


なんて最悪な発言をしているのだろう、あたしは。


そう思ったけれど、もうあたしの口は止まらなく、発する言葉は全て人を傷つけるようなもの。


こんなはずじゃなかったのに、


こんなつもりじゃなかったのに・・・


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