紫陽花
紫陽花
湿った風が土の匂いを運ぶ。
外は雨。
シトシトと葉に落ちる雨音が耳に心地良い。
開け放った窓から入る涼しい風と適度な梅雨の気怠さが眠気を誘う。
読みかけの本は思うように進まない。
何ともなしに捲るページがカサカサと音を立てる。
窓の外に見える紫陽花はそろそろ花盛り。
雨に濡れ、小さな青い花を切なげに揺らす。
カタン
小さな物音に顔を上げると、何時の間に来たのか、蘇芳が戸口に佇んでいた。
「やぁ。蘇芳。気分はもういいのかい、」
「病人扱いしないでくれよ。軽い風邪なんだから。」
蘇芳が笑いながら僕の隣に腰掛ける。
「その花は、」
彼の両腕に抱えられた紫陽花の花がキラキラと雫をこぼす。
「中庭に咲いてたんだ。鉱に見せようと思って。綺麗だろう、」
「先生に怒られても知らないよ。」
「大丈夫さ。花盗人は罪にならない。」
腕いっぱいの花を無造作に机に置いて、蘇芳は制服に付いた水滴を払った。
白い襯衣の花を抱いていた部分が濡れて、幽かに肌を透かす。
「それに、春に桜の花を手折って怒られたのは誰だっけ、」
外は雨。
シトシトと葉に落ちる雨音が耳に心地良い。
開け放った窓から入る涼しい風と適度な梅雨の気怠さが眠気を誘う。
読みかけの本は思うように進まない。
何ともなしに捲るページがカサカサと音を立てる。
窓の外に見える紫陽花はそろそろ花盛り。
雨に濡れ、小さな青い花を切なげに揺らす。
カタン
小さな物音に顔を上げると、何時の間に来たのか、蘇芳が戸口に佇んでいた。
「やぁ。蘇芳。気分はもういいのかい、」
「病人扱いしないでくれよ。軽い風邪なんだから。」
蘇芳が笑いながら僕の隣に腰掛ける。
「その花は、」
彼の両腕に抱えられた紫陽花の花がキラキラと雫をこぼす。
「中庭に咲いてたんだ。鉱に見せようと思って。綺麗だろう、」
「先生に怒られても知らないよ。」
「大丈夫さ。花盗人は罪にならない。」
腕いっぱいの花を無造作に机に置いて、蘇芳は制服に付いた水滴を払った。
白い襯衣の花を抱いていた部分が濡れて、幽かに肌を透かす。
「それに、春に桜の花を手折って怒られたのは誰だっけ、」