相合傘
そう、俺は女の子だ。
別に隠していたわけじゃない。
ただ、自分の事を“俺”と言っているだけであって、声もそんなに低くない。
服はピンクだのふりふりだの、そんなのが苦手だから着ていないだけであって、そうしたらシンプルな男の子みたいな服ばかり買ってて…
「アキちゃん、今まで俺のコト、男だと思ってた?」
「…ぁ、うん」
「あ、そっか。でも女なんだ。騙したりするつもりは無かったんだけど…、ゴメンね」
「う、うん」
アキちゃんは目をまん丸くして、ぱちぱちと瞬きをした。
そして慌てた様子で出しておいたTシャツを手に取ると、俺にそれを一瞬で着せた。
「…アキちゃん?」
「あ、そっかそっか。そうだよ、何か勘付いてた。だって男にしては目ぇデカいし、声高いし?それに手ぇ小さいしさ、この部屋だって、なんか女の子の雰囲気って感じだし!!」
そう言いながらアキちゃんはバタバタと部屋から出ると、玄関へ一直線。
「んじゃ、今日はここで失礼いたしますぅ!!」
「え、ちょ…」
バタンとしまるドアの音。
…あれ?何ですか、アレ…。
同じ女の子なら、あんなにバタバタっていうか、そわそわっていうか、ドタドタしなくていいじゃん。
今まで本当の男の子として向こうは接してきていたって事だから…もしかして、
気持ち悪いとか、思われた!?
や、でも…俺はいつもどおりにしていただけであって、別に騙していたってわけじゃないし…。