相合傘



俺はカバンの中をがさごそと探って、あるものを彼女に手渡した。

「お隣さんなんでしょ?だったら後でちゃんと返して下さいね!」
「お、ありがとぉ~」

彼女は早速、手渡した折り畳み傘を手際よく広げた。
そして何故か俺の隣を歩きだす。
別に気にすることでもないかと思って、そのまま歩いた。

洗濯用の洗剤が昨日の夜に底をついたことを思い出して、ホームセンターに寄って帰ることにした。

傘を閉じてビニールに入れ、店内の陳列棚を模索。

「……」

そして御目当ての洗濯用の洗剤を手にとって、レジへ。

「……」

会計をきちんと済ませたら、店外へ出て濡れている傘をまた広げた。



「…あ、あの~、お隣さん?」



「『お隣さん』なんかじゃなくて、アキラでいいけど~」
「じゃあ…アキちゃん、何でついてくんの?」

俺はくるりと振り返ったけど、彼女の背が高いせいで、顔は見えなかった。
ぐいっと傘の位置を動かして、さっきと同じ様に見上げる。

「あのさ、傘貸したんだから先に帰ってもいいんだよ?」
「そうしたいのは、山々なんだけどねぇ」
「だけど何?」
「帰り道、分かんなくて~」

てへっと頭に拳を上げて、舌を出す彼女。
あはは、何かこの人、物凄いムカつく人だことー…ッ!!

「俺をたまたまあそこで見つけなかったら、どうしてたわけ」
「お巡りさんに助けを求めてたかなー?」
 
なんて呑気に言うアキちゃんに、俺は深い溜め息を付いた。



こんな人がお隣さんなんて…。


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