相合傘
「よっ!」
「……」
…ごめん、アキ……。
俺さ、アキが行きたくないって
物ッ凄く嫌がってもさ、
無理矢理アキを買い物に付き合わせるんだった。
「わ、何その顔。失礼すんなぁー」
ここ1ヶ月半、姿も何にも見なかったから安心してた。
…というより、この人の存在を忘れてた。
まさか、こんなところで会うなんて思いもしないし。
「…何か用?ヒロヤくん」
「うん、付き合おッ」
うっわ、今絶対語尾にハート付いてた。
てか、再開していきなり『付き合おッ』って
…ホント何考えてんだ、この人。
「何、買い物とか?」
「んなんじゃなくて、交際の意味で♪」
ぐっと親指を立てて、二カっと笑うヒロヤくん。
その笑顔は、何だかヒロヤくんを幼く見せた。
でも、そんな笑顔に負ける様な俺ではありませんよ。
「ヤダ」
「わ~、即答…」
当たり前でしょ。
こんなヤツと付き合ったりなんかしてみろ…
絶対こっちもおかしい人間になってしまう。
…って、現にそういう人間が傍にいるんだった。
「何度も行っているだろ、俺は男なんだよ。…ていうか、彼女いるしッ!!」
こういう時にこそ!と思い、俺はアキの名前を出した。
あの時は何考えてんだって思ったけど、後々思えばこれって使えるじゃん。
俺はヒロヤくんの隣を擦り抜けた。
「ちょっと、待っ…」
いつかと同じ様に、ヒロヤくんは俺の腕を掴んだ。
ペタンッと俺のポケットから何かが滑り落ちる。
それをヒロヤくんは拾い上げ、俺は固まった。
ヤバ…!それは…ッ!!