死に神の涙
一章〜忍び寄る影は重く暗い〜
「おはようございま〜す!」

喫茶店兎の国に大声が響き渡る。
入って来たのは髪を無造作に立てたいわゆる今時の男だ。

「お、莞爾か。久し振りだな」
「やぁやぁ、苅麻。元気にしてたか?」

彼も喫茶店のバイトの一人であり、呪術者の一人だ。
名前は莞爾と書いてカンジと読む。
昔居た偉人の名前らしい。

「あれ?宇佐兎さんは?」
「今買い出しに行ってる」
「なんだ。お土産買ってきたのに」

莞爾がバックから何かを取り出す。

「なんだこれは…?」
「ん?鮭を乾燥させた物だぜい。おつまみに合うらしいから買ってきたんだがなぁ」

袋には鮭とばと書いてある。
小さく細長くなった鮭が何本も入っている。

そして疑問が一つ。

「美味い…のか?」

苅麻が心配になって聞く。

「…食べてみれば分かるさ」
「…まぁ、今度飲み会がある時に食べてみるか。それより旅行はどうだった?」
「いやぁ〜。海で泳ぎまくったよ!泳いだのなんて何年ぶりだろう…」

苅麻は宇佐兎が帰ってくるまで莞爾の旅行話を聞いていた。
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