死に神の涙
苅麻の体が少しずつ変わっていく。
背中には翼が生え、牙が鋭く尖る。

次第に死に神の姿を取り戻していく。

「宇佐兎さん!どうするんすか!?」
「な、なんとか押さえるよ!」
「んな、殺生な!」

苅麻が宇佐兎に向かって走る。
稲荷が主を守る為に走る。
鎌と扇子がぶつかる。

『…!…長くは持ちませんよ…』
「上出来だ」

莞爾がそう呟くと何を思ったか腕を噛み切る。
血が滴り落ちる。
莞爾は血を唇に付け、呪術を唱える。

苅麻の周りを重力が押さえ込む。
今までの比にならない力だ。

己の血程、強力な呪術の媒体は無い。
莞爾は己を犠牲にして、苅麻を“なんとか”押さえ込む。

「ぅ…ぅがあ!」

苅麻が叫び声を上げて莞爾の呪術を弾く。
苅麻が今度は莞爾に向かって走ろうとするのを稲荷が全力で押さえる。

稲荷は毛は逆立たせ、牙を出して唸っている。
宇佐兎の方を見ると自分の血で札を赤く染めていた。
苅麻の周りの地面が盛り上がり、水が柱を作る。
七海も同じく血を使い呪術を最大限まで引き出す。
そんな呪術も苅麻が鎌を一振りすると全て消えた。
稲荷も吹き飛ばされる。

「これは…やばいかもね」

宇佐兎が小さく呟く。
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