つまり、愛
「…今日は喋らないな。」
「そ、そうかな…?」
いつもは、暁人くんが横に居るだけで緊張しちゃって…なんでもベラベラ喋ってたけど、今日に限って何もでてこない。
頭が真っ白、ってこういうことを言うんだね。
「いつもはさ、ニコニコしながらかなり…喋るじゃん。」
「そ、そう?あはは…はは…っ」
不思議そうな顔で、あたしを見つめた暁人くん。
あたしはニッコリ最高に素敵な嘘の笑顔を向けた。
あたし、女優になれるかも…
「無理だ。顔に書いてある…。」
「え、あれ?」
「言っとくけど声、出てたから。」
そう言って、優しく笑う暁人くん。
…どこまでも残酷な人なのね。
その瞬間、あたしの手に初めて暁人くんの体温が重なった。
「今日はデートだ!」
「え…?」
「いつも元気をくれるんだからっ
今日は俺の番っ」
引っ張って笑顔でそう言うキミ。
キミは、最後まで残酷な男…
今日は…今日は…最後の日なんかにしたくなかった。
キミに初めて出会った日。
キミに恋に落ちた日。
それを、伝えようとしていた日だったのに。
でもこれはあたしだけの秘密。