白い月〜destiny〜
無理がたたったのか 父が死んだ二年後 母は腎臓を患って父のもとへ行ってしまったのだ。


その後 僕は遠い親戚の家に引き取られた。

この夫婦には子供がいなかったので僕を可愛がってくれた。

しかし僕はその愛情を受け入れられずに今日まできている。

血の繋がらない人間を親と呼ぶことがどうしてもできなかった。


父が煙になった日 そして母が煙になった日…火葬場の煙突の上には まるで骨のような白い月が出ていて 僕は…一人泣きながら見上げたその白い月を忘れることができない。

僕の閉じた目から あの時と同じ涙がひとすじ流れて落ちた。

この涙を受け止めてくれる人がこの世の中にいるだろうか。


昨日の夜 駅のホームで出会った女性の事がちらりと浮かんだが すぐに涙でぼやけて消えた。

その涙の感触を感じながら 僕は少しずつ眠りの世界へと吸い込まれていった…。

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