【企】ひびき
「・・・7月2日。」
・・・え?
「覚えてる?君が初めてこのバス停に来た日。」
あっ!
そうそう!かなり蒸し暑かったの、覚えてる。
「最初は自分以外に学生なんて、このバス停じゃ並んでないから珍しいな・・・くらいにしか思ってなかったんだけど・・。」
・・・うん。
あたしはその人とこんな風に話しているのが夢みたいに思えて、うなずくことはおろか、話を聞くことさえままならなかった。
「でも・・・毎日毎日すっごい汗かいてたり、その場に倒れこみそうな感じだったのに、それでも負けずに来てんの見てたら何か・・・こう、その忘れられなくなって・・・。」
・・・だんだんけなされてるような気にもなってきたけど、それでもあたしは嬉しかった。
だって、あたしと同じようにその人もあたしのこと見ててくれてたってことでしょ・・・?
あたしと同じように、あたしのこと忘れられなかったんでしょ・・・?
気付くとあたしの瞳からは涙が溢れ出していた。
「・・・えっ?ごめん、何か俺やった?」
あたしが泣いているのに気付いたその人は、焦ってあたしの顔をのぞきこんできた。
あたしはフルフルと首を振る。