君だけに夢をもう一度
彼氏の話では、姉と二人でコンサートに行く予定だったが、急に仕事で出張になったため、自分の変わりに正和を誘った。

「私は、正和と行っても、ぜんぜんロマンチックじゃないんだけど」
姉が厭味(いやみ)ぽく冗談を言った。

「サザンは知っているだろう? 」
彼氏が尋ねた。

「サザン・・・・・・」
正和は、サザンのことはテレビの歌番組やラジオで知っていた。
だが、そんなにコンサートに行きたいという興味はなかった。
どちらかというと、プロ野球観戦のほうがよかった。

「僕は、桑田の音楽が好きなんだ・・・・・・なんか、新しい音楽を作っている感じがね・・・・・・」
彼氏が、サザンの良さを言った。

「新しい音楽?」
正和が彼氏の言葉に反応した。

「生演奏を聞いたことは、あるかい? 」
「いや・・・・・・聞いたことない」
「本物の音楽を聞くのも悪くないと思うから、行ってみないか? 」

正和は、『本物』と言う言葉に意味しげなことを思った。

子供の頃、プロ野球選手のプレーを実際に見た時、本物のプロのすばらしさを感じさせてくれたことを思い出した。
それと、同じように音楽にも本物があるならば、それを聞いてみたいと素直に思った。

正和は、彼氏からチケットを受け取った。


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