君だけに夢をもう一度
オプニング曲が始まった。
再び、歓声が起こる。
観客の手拍子が強くなる。

曲名は、『JAPANEGGAE(ジャパネゲエ) 』だった。
正和は、姉の彼氏から、最新アルバム『人気者で行こう』を録音されたカセットテープを借りて聞いていた。
そのため、すぐに曲名がわかった。

ステージの真ん中にスポットライトがあたる。
歌舞伎姿で顔に面をかぶった男が現れて、歌い始める。

「桑田さんだ!」
正和の横にいた女性が言った。

その瞬間、ゆっくり面をとり、桑田佳祐の顔が見える。
すると、今以上に歓声が起こった。

正和は、音や光、プロのエンターテイメントは、すごいと思った瞬間だった。

その後、正和は、二時間ほど、歌と演奏に合わせて観客と一緒に手拍子やサザンの歌をくちずさんでいた。

どうして、そんなふうになったのか、よくわからなかった。


だだ、その時、正和の心の中にサザンの音楽が入ってきて、不思議と楽しく体を動かしてくれたような気がした。

おそらく、コンサートでサザンの音楽を聞いた観客は、みんなそんな気分になったんだろうと思った。

正和は、本物の音楽の力を感じた。




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