君だけに夢をもう一度
最後の曲になった。
桑田佳祐が曲の紹介をする。
友人のために作った歌だと説明した。
タイトルは 『Dear John 』だった。

ゆっくりな曲は、今までアップテンポな曲が続いた後では、妙に優しく感じらるメロディーだった。
正和は、いい歌だと思った。

歌のフレーズが、正和の心に入ってくる。
すると、急に、今まで野球をやってきたことを思い出した。
練習できつい想いをしたこと、一生懸命やってもレギュラーになれずに悔しかったこと、辛いことしか思い出せなかった。

すると、急に感傷的な気分になって、涙がこぼれてくる。
手で何度も涙を拭うが、歌が終わるまで、涙は止まることはなかった。
こんな経験は初めてのことだった。

歌が終わった後、大きな歓声がわき起こった。
ステージでサザンのメンバーが一礼をしている。

正和も、無意識に『桑田!! 』と、声を出していた。
正和は、人生で初めて音楽を聞いて感動をした。

正和は、歌を聞いて、人を泣かせるなんて、音楽には不思議な力があることを、サザンの音楽で知らされた。
 



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