君だけに夢をもう一度
正和の手の中でギターの重さがのしかかる。
かなり重いものだと実感した。

正和は、竹中からギターコードを教えてもらった。
指先が痛かったが、Cのコードを左手で押さえて、右手でピックを持って音を出してみた。

アンプから力強い音が出てくる。

初めて自分が弾いたギターの音に、正和は感激した。
再び、竹中がギターを手にして椅子に腰掛けた。

「正ちゃん、『いとしのエリー』は、歌える? 」
竹中が正和に歌詞を渡して、演奏にあわせて歌ってみないかと誘われた。

正和は、歌うことは嫌いじゃなかった。
そのため、おもしろ半分で歌うことにした。

ギターの演奏が始まると、どこで歌い始めたらいいのかタイミングがわからない。
竹中が、「はい」と、声をかけたら歌うようにと言われた。

演奏が始まり、竹中のかけ声で正和は歌い始めた。
すると、不思議と演奏にあわせて歌えた。
歌い終えた後、正和は妙に気分が良かった。
まるで、自分も昨夜のミュージシャン気分だった。

正和は、竹中から高校生になったら、一緒にバンドをしないかと誘われた。

その時、正和は、自分がステージに立ち、スポットライトを浴びて、大勢の歓声が聞こえてくる光景が想像できた。
その瞬間、「やろう! 」と返事をした。

正和がメインボーカルで、竹中がギターを担当することで話しが決まった。


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