君だけに夢をもう一度
その頃、たまたま福岡でレコード会社が主催するオーディションがあった。

そこで優勝すると、東京の本大会に出場できて、何人かはプロ歌手への道が開けるというものだった。

正和もオーディションを受けてみた。

書類選考では、履歴書と自分が歌ったデモテープが審査の基準で見事に合格した。

第二審査は、オーディション会場で審査員の前で歌うことになる。

オーディション会場は地元のテレビ局で行われた。

会場に向かうと、主催者から審査を受けるのが百人ほどいると説明された。
中学生ぐらいから社会人まで、幅広い層の人間が集まっている。

正和は審査まで、ロビーで待つようにと言われた。

待つ間、正和と同じオーディションを受けにきた人達が、発声練習をしたり、踊りの振りの確認をしたりする光景があった。

その中で正和も、ギターをチューニングしたり、歌詞を間違えないように何度も歌を繰り返した。

時間が経つにつれ、緊張感が張り詰めてくる。
やがて、正和の順番がやってきた。


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