君だけに夢をもう一度
二人は、杉で出来たダーク色のカウンターに座った。
カウンターを挟んで女性のバーテンダーが立った。

「どうぞ」
バーテンダーがドリンクメニュー表を差し出した。

バーテンダーは、小柄で黒のカマーベストのタキシード姿だった。
顔が小さく瓜実顔の美人だった。


敦子がメニュー表を手にした。

正和が店の中を見渡した。
店の造りは変わっていなかった。

カウンターは八人まで座れて、ボックスが二つある。二十人も入ればいっぱいになる店だった。

マスターは、50年代や60年代のアメリカン・ポップスを好んで聞いていた。
そのため、壁にはジェームス・ブラウンやプレスリーのポスターが貼ってある。

正和と敦子が学生時代に通った頃と、まったく店の雰囲気は変わっていなかった。



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