君だけに夢をもう一度
「遅れましたけど、どうぞ」
バーテンダーがつき出しに用意していた 白い小皿にのった三角形のカマンベールチーズを差し出した。

「ありがとう」
正和が言った。

「君、この店はひとりでやっているの? 」
マスターがいないことが気になって、正和がバーテンダーに尋ねた。

「えぇ、私がひとりでやっています」
バーテンダーが答えた。

「このお店は、『サラ・ジェーン』って言うんでしょう? 」
今度は敦子が尋ねる。
「えぇ、昔から店の名前はそうです」

「だったら、マスターのことはご存じですか? 」
正和が尋ねた。

「父のことですか? 」

バーテンダーが答えたことに、二人は目を丸くしたように驚いた。
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