君だけに夢をもう一度
「学生時代って、長髪だったんですね? 」
千賀子が若い頃の正和の写真を見て尋ねた。

「そうなのよ。正和ったら、大学を卒業するまで、ずっとヘアースタイルは変えなかったのよ」
敦子が答えた。

「マスターが、あだ名をつけたのよね」
「どんな、あだ名なんですか? 」
敦子の話に千賀子も興味深く聞いた。
敦子がチラリと正和の顔を見た。

「言わなくていいよ」
正和は照れるように言った。

「良かったら教えてくれませんか? 」
もったいぶるような敦子に千賀子が尋ねた。

「チビ・レノンって言われてたの」
「チビ・レノン・・・・・・!?」
千賀子が聞き直した。

「どうして、なんですか? 」
千賀子は、あだ名の由来を聞きたかった。

「当時、ジョン・レノンをまねてロングヘアーにしてたんだけど、ぜんぜん似合ってなかったのよ。それで、おもしろ半分でマスターがチビ・レノンってつけたのよ」

千賀子が正和の方を見た。
正和は照れを隠すように水割りを一口飲んだ。

「ジョン・レノンが好きなんですか?」
千賀子が正和に尋ねた。

「サザンオールスターズが好きでね。桑田佳祐がジョン・レノンを尊敬していたから、自分もまねていたんだよ」
正和は、恥じらいながら答えた。



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