君だけに夢をもう一度
やがて、正和は敦子と会う時間より、彼女と会う時間の方が増えた。
その頃の正和には、敦子より目の前のデビューが大事だった。

敦子も正和には、自分の存在が心の中にはないことを感じとって、正和から離れる決心をした。

ちょうど、その頃、敦子の父親から卒業後は、実家に帰ってくるようにと、何度も連絡を受けた。
しかし、実家に帰れば、父親の言うままに人生が決められてしまう。
それを拒む手段で中学校の教員試験を受けたら、運良く合格をした。

敦子は、正和と組んでいたバンドを辞めて、正和と別れる決意をした。

別れは、敦子から告げた。

その時、正和は、一緒にプロデビューを目指そうとバンドに残ることを勧めた。
そして、敦子のことを好きだとも告げた。

しかし、その時の敦子には、自分を女性として一緒にいたいと思うことより、バンドのメンバーとして引き留めたとしか感じなかった。

「夢だけでは、生きてゆけないの・・・・・・」
と、敦子は言って、正和の元を離れた。

本当のことをいえば、正和のことが、まだ好きだった。
敦子は、自分自身に嘘をついた。



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