君だけに夢をもう一度
敦子と別れた後、正和は以前よりもプロを目指して音楽活動を続けた。

プロにならなければ、敦子と別れた意味がないと強く信じて音楽に打ち込んだ。

そんな時、彼女から音楽プロデューサーの父親と会う機会を作ってくれた。
正和は、デモテープを作って父親に聞かせた。

数日後、その父親から会いたいと連絡を受けた。

正和は彼女の自宅を訪ねた。
自宅は都内にある高級マンションだった。

広いリビングに案内されて、黒い皮のソファに父親と差し向かえに座った。

父親は、正和の音楽をプロのレベルには値するが、聞く側の心を引きつけるものを感じさせないと厳しい評価をした。

娘から、正和をデビューさせて欲しいと頼まれていることを聞かせれた。
しかし、父親もプロとして、正しい評価をしなければならない。
そのことは理解して欲しいと告げられる。

父親から、自分のアシスタントをしてみないかと誘われた。
プロのミュージシャンとしてではなく、音楽を作る裏方の仕事を勧められた。

正和は断った。
裏方の仕事も自分の音楽を聞いてではなく、娘の薦めで誘われたのだとわかっていたからだ。

それ以来、正和は彼女とは会わないことにした。


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