君だけに夢をもう一度
正和は羽田空港に着いた。
搭乗手続きを終えて出発まで空港内の待合い用の椅子に座った。

正和は、ジャケットの内ポケットに何かが入っているのに気づいた。
取り出すと敦子の名刺だった。

昨夜、『サラ・ジェーン』で渡されたものだった。

名刺には、敦子が所属している音楽事務所の連絡先と、敦子の携帯メールのアドレスが書いてあった。

正和は、このまま敦子に何も言わずに別れることに後悔があった。
昨夜、敦子の本当の気持ちを知った。

敦子は、自分の元を離れていても、自分のことを好きだということを知った。
正和は、もう一度、敦子に会いたかった。

会ったところで、昔のような男女の関係にはならないとしても、自分のことをわかってくれる人間を大切にしなければいけないと思った。

マスターの死は、そのことを教えてくれたような気がする。
敦子は、そんな女性だと素直に思った。

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