君だけに夢をもう一度
カセットテープからは、正和自身が、夢に向かって生き生きと歌っている感じが伝わってくる。
敦子のキーボード演奏も心地良く聞こえる。

正和はカセットテープを止めた。

「思い出した。これ、マスターの店に忘れたままだった」

ヘッドホンステレオは、自分が演奏した歌を聞き直すため使用していたものだった。

どこかに置き忘れて失したことに気づいていたが、音楽を辞める正和にとっては、必要のないものだと思い、そのまま故郷に帰った。

今、再び、自分の元に戻ったことが不思議だった。

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