君だけに夢をもう一度
「千賀子さんから、正和の忘れ物があるから、私に届けて欲しいって届けてくれたの。悪いと思ったけど、どんなものが録音されているのか、聞いちゃった」

「・・・・・・」

「このテープを聞いた時、なんか懐かしい感じもあったけど・・・・・・正和の歌も私の演奏もテクニックより熱いハートみたいなもの感じちゃった・・・・・・」

敦子は笑顔で言った。

「今、思うとね・・・・・・私達、演奏のことで、ぶっかりあったり、励ましあったり、そうやって、お互いを成長させていった気がするの。それは、かけがえのない仲間でもあり、大事な相手でもあったと思ってる」

「自分も、そう思っている。俺は、敦子と一緒に演奏して歌っていた時が、自分らしく生きていたような気がする。そして、自分の場所も、そこにあったような気がする」

正和は、今まで敦子に伝えたかったことを告げた。


< 72 / 76 >

この作品をシェア

pagetop