君だけに夢をもう一度
「そうだな。敦子と再会して、わかったことがあるんだ。俺は、今まで自分自身をごまかして生きてきたような気がする。好きな音楽を捨てたのは、自分自身の昔を忘れたかったからだ。でも、本当に自分らしく生きることは、やはり好きな音楽をやっていることじゃないかなって思った。今、このテープを聞いた時、素直に思ったよ」

正和も真顔で答えた。

「また、歌ってみようと思う。今度は、自分自身が楽しむように歌ってみたいんだ。本当に一緒に演奏してくれるかい? 」

正和は頼んだ。

「もちろんよ。こちらこそ、よろしく」

正和が右手で握手を求めた。
敦子は、右手を差し出して握手をした。
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