Pure*Love―透明人間が恋をした―
「おいおい、王族の大行進に姫様がいらっしゃらないなんてどういうことだよ。」
「生でお目に掛れると思ったのによ〜…」
王族の大行進を見ていた輩が茂みに入ってきたのだろうか、近くで声がする。
「私…そろそろ行きます!」
ペコッ、頭を下げて、ローズは駆け足で去っていった。
「あ…」
呼び止める暇もなく、彼女を求めて伸びた行き場の無い右手が、寂しく躊躇いがちに落ちた。
「よぉ!クォーツのピッピじゃないか!!」
先程の輩がピッピに気付き、絡んできた。
ドンッ!
「痛っ…」
「いいねぇ見えるって!外すことが無い!!」
ケラケラ笑う2人組の声も、ピッピの耳には届かない。
頭の中は、ローズのことで一杯だった。